ガネーシャ博物館に行ってきた

10月16日(月)

今日は信心深いお話だ。ドンデン返しは一応あるけど。

朝から彼女とメーワーンというところにある「ピピッタパン プラピカネット」へ行ってきた。日本語に訳すと「ガネーシャ博物館」とでも言えばいいのだろうか。

ガネーシャと言われても僕はわからない。ましてや彼女からタイ語で「プラピカネット」なんて言われた日には、何のことかさっぱり分からなかった。


僕は昨日の夜に彼女と会った時、「一緒にお寺に行きたい」とリクエストした。そして今日その場所に着くまでお寺に行くんだと思っていた。

期待は裏切られたけど、まあいいか・・・。

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メーワーン郡にあるこの博物館はチェンマイの中心部からだと1時間くらいかかるだろう。僕たちは市内ではなく、南西部に住んでいるので30分くらいで行けた。

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仏閣もあって、お寺らしい雰囲気もなくはない。でも、ここは博物館。入場は無料。駐車場が狭いところを見ると、そんなに人は来ないのだろう。

穴場か?

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ガネーシャは、象の頭をもつ神様で、インドのヒンドゥー教が起源なんだそうだ。日本のお寺にもある。タイにはたくさんある。そう言えばお寺のどこかに象人間みたいなのがあった。

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こんなのも面白いけど、いくらなんでも裸はちょっと・・・。と思ったが写真を見直すと、どうもそうじゃない気もしてきた。

いや、おへそが見えてるから、やっぱ裸か・・・(どうでもいい)


ウィキペディアによると、ガネーシャは現世の利益を求める人に信仰されていて、とくに商業の神様、学問の神様なのだそうだ。要は金儲けに興味のある人が興味を持つ神様らしい。

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彼女もガネーシャの写真を撮っていた。めったに写真を撮らない女だから、やっぱりお金儲けに興味があるんだ。

僕はほとんどないけど。興味があるのは女だけ?

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これはガネーシャの結婚式と書いてあった。結婚式なのに花婿だけいて、花嫁の姿が見えなかったけど、どうなってるんだろう?

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美女がガネーシャにマッサージを施してるところ。何か魂胆でもあるのかな?


さて、順番が逆だけど、博物館に入ってすぐのところにこんなのがあった。

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これは歓喜天。「かんぎてん」というらしい。僕は知らなかった。信心深くないもんで・・・

で、これは男と女の神様が抱き合っているところで、頭に飾りがあるのが女。つるつるなのが男。

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で、解説があった。なにしろタイ語なもんで、その場で読むには時間がかかる。だから家に帰ってから写真を拡大して読んでみた。

だいたい分かったような気がしたけど、辞書を引くのが面倒になった。だから、やっぱりわからなかった。


空海のことが書いてある。空海が大陸にわたって日本にインドの密教をもたらしたことは知ってる。でも、タイと関係あるのかな?

それはこの際、どちらでもいいことにしよう。


この「歓喜天」とは何か?

諸説が存在するらしい。男の神様が荒れ狂って悪いことをするので、別の神様(観音菩薩)がそれを鎮めようと、美女の姿になって男の神様に近づいた。

すると男は女を抱きたいと思った。どうしても抱きたーい!僕も神様じゃないけど、女を抱きたい!

それはおいといて、女は男に言ったそうな。

「あなたの願望(欲望=性欲)を満たしてあげるから、これからは暴れるのはやめてください。おとなしく、いい子になってください。そして仏の教えを守ってください。」

そしたら、男の神様は女を抱きたいからその通りにしたのだそうだ。

なんじゃこれ。男って、だいたいそういうもんじゃがね。神様でもそうだから、人間の男はほとんどみんなそうだよね。ね。僕も女を抱きたいから女の言うことをずっと聞いてきた。


ということで、博物館のあとは市内に戻って密室でお勤めに励んだのである。

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真夏の情事・余話

10月15日(日)

8日連続でエントリーした「真夏の情事」は、実は3日足らずで書き上げた記事だった。おかげでこの1週間ほどは日記を休むことができた(笑)。

裏を明かせば、最初は小説でも書くつもりでいた。膨らます材料は僕の頭の中にいろいろと揃っていた。結果として部分的には小説っぽくはなったが、あくまでも日記だ。99.5%は事実を書いた。妄想ではない。「事実は小説よりも奇なり」とは昔からある言葉だ。実際にあったことと、僕の思ったこと感じたことを書いただけだ。0.5%を除いて。

ところで、今も腑に落ちないことがある。どうしてあんなに簡単に美人と出会えて、あんなに早く意気投合して、そして素早く肉体関係を結ぶことになったのか。彼女は出会い系サイトに登録している数ある女性の中で、僕に最初にメッセージをくれた女性だ。そのせいもあって、1回会っただけで僕は「運命の出会い」だと確信してしまった。その思い込み(勘違い)が、前のめりに突き進んでいく原動力になった。

アラサーの彼女の反応は、僕の予想とはまったく異なるものだった。彼女にしてみれば僕の「浮気」だから、とても許せないと言って怒り狂うか、あきれて僕のところから去っていくか、そのどちらかだと思っていた。タイの女は怖い。ところがそういう性質の女ではなかった。

あの出来事以来、彼女は変った。僕も変わった。何が変わったかというと、彼女は僕に浮気癖があるのが分かったので、目を離せないと思うようになった。だから一緒に住むのはなるべく早い方がいいと彼女も思うようになった。最近は住む家(とりあえず借家)を探したりしている。僕は3年や5年も待つ必要がなくなった。おかげで、老後の面倒を看てもらうには、何とか間に合いそうだ(笑)。

彼女はよく言う。「あれがあったから、私たちは深く愛し合えるようになったのよ。私はあのとき心の底からあなたを愛していると実感したの。だけどね、胸が張り裂けそうに苦しかったのよ!ほんと~に死にたいと思ったのよ!」

彼女の言葉の裏を返せば、8月までは、それほど僕を愛していなかったということになる?そしてもうひとつ。「私はあなたと出会って3年以上よ。その人はたったの3週間でしょ。(フン!)」・・・そんな女に負けるはずはない、と確信していた?

彼女にそこまで愛されて、僕も満更ではないんだけど、彼女が心配したのはお金のこともあったはず。人間というのは、毎月使えるお金がいったん増えて、ある日突然それがなくなると大変だ。生活水準を元に戻せばいいんだけど、それがなかなか難しい。だから彼女も、「この人がいなくなったら困っちゃう」と、戦々恐々だったに違いない。

そして最後に黒髪美人のこと。僕のことを怒っただろうか。それとも呆れ果てて苦笑いでもしただろうか。それはまったく分からない。彼女は、見てくれも性格もいい女だった。知性もあった。そしてお勤めぶりは並じゃなかった。なぜいい相手が見つからなかったのか、今でも不思議なくらい魅力のある女だった。

LINEの最後のやり取りの中で、それこそ最後に、僕は謝罪の言葉を書いた。でもそれに対する返事はなかった。彼女にしてみれば、不本意な相手と出会ってしまったに違いない。

それとも、謎めいた書き方をするけど、アラサーの女さえいなければ計画がうまくいったのにと思ったかもしれない。僕の想像にすぎないから、これ以上は彼女の名誉のために書かないでおくけど、その計画とは、タイではよくある“外国人のお金目当ての結婚”のことだ。タイでなくても日本でも(「外国人の」を除けば)よくあるから、目くじらを立てるほどのことじゃない。そして、もし彼女が純粋に僕のことを好きになってくれたのだとすれば、ちょっと未練が残るんだよな、これが(笑)。

蛇足だけど、「真夏の情事(最終回)」のエンディングを、さっきちょっと変えてみた。そしたら、それだけで少し「作品」っぽくなったような気がする。中味は何でもいいけど、ストーリーを構成するのは面白い。生き物だ。だから書くのがやめられない。老後の楽しみにとっておくものじゃない。

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真夏の情事(8)最終回

10月14日(土)

黒髪美人は日曜日の夜に実家から戻ってきた。翌朝はいつも通り会社に出勤した。女子寮から職場に向かう途中、彼女は綺麗な新しいアパートを見つけた。看板を見ると、家賃は5000バーツからとなっていた。部屋を見る時間がなかった彼女は、自分が仕事をしている間、僕に下見してくるよう頼んだ。

この日も、前日に引き続いてアラサーの彼女から頻繁にLINEが入ってきていた。でも見なかった。僕はアパートのことで無我夢中だったのだ。そのことだけに心を奪われていた。

昼を少し過ぎた頃、僕は黒髪美人が見つけたアパートにいた。路地の一番奥にある、間口の狭い地味な茶色のアパートだった。玄関から入ると、可愛らしい縫いぐるみの人形を置いた小さなロビーがあった。応対してくれた管理人の女性はオーナーの娘で、若かった。アラサーの彼女と少し似ている気がした。彼女は普通の部屋と、少し広めの部屋を見せてくれた。中はどちらも綺麗で、とくに広い方はシャワールームに十分なゆとりがあった。家賃は1か月6,500バーツだった。僕は広い方の部屋が気に入ったので彼女にLINEで報告した。

そのあと、ちょっとしたアクシデントが起きた。すぐ近くのもう1軒のアパートも見ておこうと思って車を出そうとした。車を切り返すためにバックした瞬間、ドーンという大きな音とともに衝撃が走った。何にぶつけたのか分からなかった。駐車場にコンクリートの柱が1本あったが僕はその存在を認識していた。それに、車にはバックセンサーが付いているのに全く鳴らなかった。ぶつかって出来た後部の凹みは、そのセンサーのすぐ横だった。僕は45年以上車に乗っているけれど、自分から何かにぶつけたことなど一度もなかった。キツネにつままれた気分だった。

実はこの日、もうひとつアクシデントが起きていた。銀行のキャッシュカードを失くしたのだ。これも初めてのことだった。朝、アパートの手付金を用意しようとATMで少し現金をおろした。どうやらその時にカードを取り忘れたらしい。数日後に、アラサーの彼女と一緒にいるときに初めて気がついた。そして二人ですぐ銀行に行って再発行してもらった。

同じ日に起きた二つのアクシデント。アラサーの彼女は言った。

「あの頃のあなたはどうかしてたのよ。普通じゃなかったのよ。自分を見失っていたから、そういうことが起きたのよ。」

それを否定するつもりは全くない。僕は出会い系サイトに登録してからの三週間、自分を見失っていたのかもしれない。

さて話を月曜日に戻そう。夕方の4時、僕は黒髪美人と待ち合わせして再びアパートに向かった。そして彼女に部屋を見せた。彼女も気に入ったのですぐに契約した。入居日はその週の土曜日にした。そして手付金として2000バーツを払った。彼女は女子寮の8月分の家賃2,500バーツを払っていたから月末に引っ越しするつもりでいた。

「そんなことは気にしなくていい」と僕が言うと、彼女は一瞬怪訝そうな表情を見せたが、結局同意した。

そのあと黒髪美人と僕は軽く食事をしてからまたホテルに行った。会うと必ずホテルに行くのは、アラサーの彼女のときと同じだった。黒髪美人もそうするのが好きだった。

床上手の黒髪美人とのひとときは、楽しいはずだった。この日も確かに2回のお勤めをこなしてはいたが、原因不明の違和感を覚えた。

事が終わって、二人は一糸纏わぬ姿のままベッドの上に横たわっていた。僕は彼女の背中を左腕で抱いていた。目の前にはスレンダーな美女の乳房があった。そのとき、なぜか僕は妙な気分になった。

「どうして僕はここでこうしているんだろう?僕はこの女性を愛しているのだろうか?」

アラサーの彼女と比較したのではなかった。そのときは彼女のことは全く忘れていた。それにもかかわらず、僕はこれが最後に違いないと直感した。

いつものように黒髪美人を車で女子寮まで送り届けた。そして自分の家に戻るとすぐにLINEを見た。この日も朝からアラサーの彼女はたくさん書いてきていた。前の日と同じようなことがたくさん書いてあった。


「どうして私はあなたをこんなにまで愛してしまったのでしょう。」

「死んだ方がましです。あなたなしでは生きられません。」

「どうして返事をくれないんですか?会いたいです」

・・・

しかし僕がちょうど家に入った頃だった。いつものような普通のLINEが入ってきていた。

「ご飯は食べましたか?もう家に帰ってますか?私の愛する人。」

「もう家に帰ってきてるよ。ご飯は食べたよ。少しお酒飲んでもいい?」

そう返事すると、

「飲んでいいですよ。でも2杯までにしなさいね。」

これもいつもの彼女だった。そして、

「今度一緒にビール飲むのはいつ?」

と聞いてきたので、僕は躊躇なく答えた。

「もちろん明日に決まってるじゃないか。」


8月8日、火曜日。次に黒髪美人と会う日まで待てなかった。直接会って話すのも怖かった。それで朝、LINEで彼女に告げた。

「今日は大事な用件であなたに言わなければならないことがあります。ものすごく言いにくいことですけど・・・」

僕の書いた言葉は英語だったが歯切れが悪かった。まわりくどく切り出した。彼女はすぐに反応した。

「なんだか悪い予感がしてきたわ。怖いわ・・・聞きたくないわ。」

僕は続けた。

「僕には実は3年付き合ってきた女がいます。その女は僕のことを忘れられないと言ってきました。」

すると彼女は、

「その人は何処の人ですか?いくつの人ですか?」

と畳みかけるように聞いた。

「チェンマイです。30歳くらいです。」


きっと彼女は凍りついたに違いない。でも落ち着き払ったように続けた。

「結論だけ簡潔に言ってください。あなたはその人を今も愛してるんですか?」

「はい。いま彼女を愛しています。」

黒髪美人との会話はそこで止まった。そして、真夏の情事は終わった。(完)


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真夏の情事(7)

10月13日(金)

8月に入り、黒髪美人と出会ってから3週間が経とうとしていた。彼女は1か月に一度週末に、バスで3時間ほどかかるチェンマイ県北部の実家に帰るのが常だった。そして8月最初の土曜日、母親に事の次第を報告していた。

「最近日本人の彼氏ができたんですよ。少し歳はとってますけど、見た目はまだまだ若くて、とても元気な人です。」

「それはよかったね。やっといい彼氏にめぐり会えたんだね。心配してたんだよ。もうすぐ40だものね。気候がよくなったら一度その人を連れておいで。」

そんな会話が母娘の間で交わされた。彼女はタイ人の男と5年ほど前に離婚していた。子供はいない。出会い系サイトに登録して真剣に相手を探していたが、これはという男にめぐり会えなかった。ファランとはデートしたことがあるが、みんな例外なく下腹の出た太っちょで、彼女の好みに合わなかった。

僕が黒髪美人の新しい住まい探しに奔走していた頃、アラサーの彼女からはいつになく頻繁にLINEが入ってくるようになった。彼女が変だと気付いたのは、「明日は暇だよ~」と会おうとしたのに、僕がそっけなく断ったときからだった。それまでは、都合が悪いときは必ず理由を具体的に言った。夜だったら、誰々さんと何処どこの店で飲む約束をしているとか、昼間だったら誰々さんと何処どこのゴルフ場に行ってくるとか・・・。そしてほとんど無言で食事した7月末の尋常でないデートは、彼女の不安を決定的なものにした。

8月6日、日曜日。この日は朝から晩まで断続的にLINEが入ってきた。黒髪美人の留守の間にアパート探しで飛びまわっていた僕は、最初はほとんど無視を決め込んだ。

夥しい数のLINEから、いくつかをピックアップするとこうなる。

「すごく愛してます。こんな風に隠れないで。心が傷みます。何かあるのなら、言ってください。ずっと待ってます。」

「ずっと不安です。気持ちが変ったんですか?とっても怖いです。」

「私を捨てるつもりなんですか? 愛する人、どうして私の心はこんなに辛いんでしょう。」

「ほかの女がいるのではないですか?本当のことを言ってください。ね、言って!私は何でも受け入れますから。」

朝の6時半に始まって、結局夜の9時過ぎまで続いた。何度も何度も彼女は切ない思いを伝えてきた。彼女の言葉を読むうちに、僕は心が揺さぶられていた。無視することができなくなっていた。それまで黙っていたのに、少しずつ返事をするようになった。

「起きてしまったことは仕方ないです。で私たち、これからも付き合えますか?私はできますよ。」

これに対して、

「今度話すから、待ってて。」

と書くのが精いっぱいだった。

「それはいいことですか、それとも悪いことですか?」

と聞いてくると、

「あなたにとっては、よくないことだよ。」

と正直に返事した。

彼女は辛い心のうちをぶつけてきた。女心をそのまま訴えかけてきた。

「やっぱり私たちのことですね。それなら受け入れられません。終わりにするんですか?私は終わりにできません。」

「私は心が折れそうです。私を捨てないで!お願いだから!もう私に会いたくないんですか?」

「可哀想とは思いませんか?私には誰もいないの。何でも受け入れますけど、捨てられるのだけは嫌です。お願いですから待ってください!」


彼女はバンコクで看護婦をしていた20代の前半は恋どころではなかった。大病院の救急で働いていたのでそんな時間は全くなかった。疲れ果てて普通の会社に移ってから同年代の男に出会った。はじめて恋に落ちた。でも例によって男の浮気が原因でそれは長く続かなかった。彼女は少しだけ心を痛めたけれど、すぐに忘れることができた。3年も付き合ったのは僕が初めてだった。

「こんな思いをするなら死んだ方がましです。ものすごく心が痛いんですよ。こんなに心を痛めているんですよ。こんな風になったことは、29年生きてきて一度もありません。」

「これまでご飯を一緒に食べて、いろんなことを話し合って、もう3年も付き合ってきたのに、それが全部なくなるんですか?家を買って一緒に暮らすことも、全部なくなるんですか?」

そして彼女は思いもしなかった言葉を書いてきた。

「毎日じゃなくてもいいです。時々でも会ってくれませんか?愛人でもいいです。私と会ってください!」

愛人でもいいという言葉に僕はドキッとした。僕が別の女と暮らしていてもかまわないということか。僕はこの言葉でハッと我に返った。もしかしたら、僕は彼女を今も愛しているのではないか?別れようとしたって、別れられないのではないか?そんな感情が湧いてきて、こう返事した。

「僕はまだキミを愛してるよ。会うことはできるよ。ご飯も一緒に食べられるよ。」

すると彼女は急に明るさを取り戻した。

「じゃあ、一緒に寝ることはできますか?ははははは・・・」

彼女はそれまでウサギさんが涙を流して泣いているスタンプを言葉の後ろに付けていたのに、この日はじめて笑い顔のスタンプを添えてきた。僕は思わず、「僕には新しい恋人がいるんだよ」と、ついに本当のことを書いた。でも彼女は間髪を入れずに返事した。

「恋人が何人いたって、関係ないわ。」


こんなやりとりが延々と続いた。本当に延々と。彼女の姿は見えなくても、LINEをしながら微笑んでいるように思われた。夜も9時を過ぎるころ、僕は「仕事、頑張ってね」と励ました。すると彼女は、

「仕事が終わったら一緒にご飯を食べに行きましょうね」

と書いてきた。

「で、ご飯のあとはどこへ行く?」

と僕。彼女の答えは・・・

「さあ、どこかしらね・・・レオテー!(お好きなように)」

ついに彼女から僕たちの合言葉の「レオテー」が出た。僕がまだ彼女を愛していることもはっきりした。けれども、その感情を自分の中で一生懸命押さえつけようとした。それは黒髪美人への当然の誠意でもあった。しかし、あまりに水圧が高まれば、どんな堤防でも決壊する。それは単に時間の問題だった。


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真夏の情事(6)

10月12日(木)

7月末の月曜日のお昼時。僕とアラサーの彼女はイサーン料理店のテーブルを挟んで向き合っていた。こじんまりとしたその店は屋内と外の両方にテーブルがあって、僕たちは外の、しかも一番奥のテーブルに座ることが多かった。この日もそうだった。

いつもと違うのは二人の間に会話がほとんどなかったことだ。僕は別れを切り出すつもりでいた。彼女はいつものように料理が運ばれてくるまで携帯をいじくっていたが、何かを警戒して寡黙だった。この日はビールを注文しなかった。

彼女は当然気づいていた。なぜなら、店に着くなり僕があり得ないことを口にしたからだ。「今日はホテルに行かないけど、いいね?」・・・別れの言葉のつもりではもちろんなかった。でもこれが、僕の精いっぱいの別れの言葉だったのかもしれない。

彼女は明らかに作り笑いをしながら車を降り、「いいですよ。また今度ね。」と答えた。彼女が生理中でもないのに、僕が行かないということはない。「また今度ね」と言う彼女を見て、いたたまれない気持ちになった。何かを一生懸命堪えているのが手に取るように分かったからだ。もちろん、ホテルに行かないからではなかった。

ほとんど無言で男と女が食事する。それは長年連れ添った夫婦の場合はあるかもしれない。けれども、恋人以上夫婦未満のカップルでは普通はあり得ない。沈黙に耐えきれなくなった僕は、彼女が予想もしていない言葉を口にした。自分でも、それは予定になかった。それは別れの言葉とは相当にかけ離れていた。

「この前、携帯の調子が悪いって言ってたよね。今日、新しいの買ってあげるよ。」

どうしてそうなったのか、僕もよくわからない。彼女も意表を突かれたようだった。一瞬表情が緩んだように見えた。でも、すぐに固い表情に戻って「まだ使えるからいいです」と言った。「そんなこと言わないで。買ってあげるって決めたんだから。」僕は食事が終わるとサイアム・ティービーという、おそらくチェンマイで一番大きな電器店へ彼女を連れて行った。

彼女は本当は新しい携帯がほしかった。だからお店に着くと上機嫌になった。これが女というものだなと思った。彼女の喜ぶ姿を見て少し嬉しくなった。新しい携帯を触っている彼女のあどけない横顔がものすごく可愛く思えた。

電器店を出てすぐに彼女に聞いた。「どうする?もう家に帰っていいかい?」・・・すると彼女は明るい声で「レオテー(お好きなように)」と答えた。いつも通りの返事だったけれど、ふと助手席の彼女に目をやると、顔は笑っているのに涙が溢れていた。その透明な涙が頬を伝わってポトリと落ちるのも見えた。新しい携帯を手にしたハッピーな女ではなく、愛する男が自分から離れていくことを悟った悲しい女がそこにいた。

急に彼女を抱きたくなった。僕はいつものホテルに車を走らせた。そして、いつもと違って激しく彼女を抱いた。どうして貪るように彼女を抱くのか、自分ではその理由がよく分かっていた。そしておそらく彼女も、本能的にそれが意味することを察したに違いない。別れが迫っていることを・・・。

同じ週、彼女と会った次の日も、そのまた次の日も、僕は黒髪美人と会った。そして同じホテルで抱いた。自分の中にそんなエネルギーがあったとは考えてもみなかった。別れを告げようとしてアクシデントで抱いてしまったアラサーの彼女の肌のぬくもりを、一刻も早く忘れたいかのように・・・。

僕は黒髪美人のためにアパートを毎日のように探した。彼女の職場に近いMAYAショッピングセンターの周りで物件を探した。予算を少しオーバーするがコンドミニアムも見に行った。3日かけて下見した中で一番気に入ったのは、少し彼女の職場から離れるが、チェンマイ大学に近い閑静な住宅街にある瀟洒なコンドミニアムだった。

そこは5階建ての5階でリビングが広かった。ガラス張りの広い開口部をもつリビングから見える夜景を想像した。きっと素晴らしいに違いないと思った。ところが僕のイメージの中で、その夜景を一緒に眺めているのは黒髪美人ではなかった。僕の横にはアラサーの彼女がいたのだ。ここで彼女と一緒に暮らせたらなぁ・・・そんな思いが急に湧いてきて、その突拍子もない想念を振り払おうとする自分があった。

黒髪美人と毎日交わすLINEの会話は、これから住むアパートのことに集中していた。僕が探してくるコンドミニアムは彼女の基準からすると贅沢過ぎた。でも僕にしてみれば、彼女が住むと言うよりも、僕たち二人の愛の巣を探しているつもりだった。彼女はなるべく安いアパートにして、浮いたお金を実家に送りたかったに違いない。

僕と彼女の折り合いの付くアパートを見つけるのに、それほど時間はかからなかった。彼女は自分の職場から近くて、バイクなら5分もかからない便利なところに新しいアパートができているのを発見した。しかし彼女には朝から仕事がある。その日は僕が下見をしてくることになった。ドンデン返しが刻々と近づいていた。

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真夏の情事(5)

10月11日(水)

食事が終わると黒髪美人の顔から笑みが消えていた。急に無口になった。何かを警戒しているようにも見えたし、何かを期待して身構えているようにも見えた。僕は昨夜決心したことを実行することしか頭の中になかった。

車は行き先も決めずに走り出した。相変わらず彼女は無言だ。「どうします?コーヒーでも飲みに行きますか?」・・・そう問いかけても返事がない。返事がないということは、コーヒーには全く興味がないことを意味していた。それに「コーヒでも・・・」という声に元気がなかった。きっと黒髪美人は、僕が本気で言っていないことを察したはずだ。

車が走り出してすぐだった。そうだ、はっきり言葉に出して確かめないといけないことが一つあった。それは今しかチャンスがないと思った。多分これから先は機会がないかもしれない。そう、もう明日はない。そう思うと、自分の心臓がバクバク鳴っているのが分かった。テーブルを挟んで向かい合っているときよりも、密室の車の中は言いやすかった。自分の声が少し震えているのがわかった。

「僕はあなたの・・・フェーンになりたい。いいですか?」

フェーンはタイ語で恋人、連れ合い、そして夫婦を意味する。僕の言葉に、黒髪美人はフロントガラスを向いたまま、表情をまったく変えずに低い声で即答した。

「ダイ カー」(いいですよ)

これで僕の緊張が一気に解けた、という訳ではなかった。答えは、前回会った時の彼女の態度で分かっていた。そうでなければ、自分から手を握ってくるはずがない。だが問題はこの次だった。僕の心臓はさらに高鳴った。清水の舞台から飛び降りるつもりで勇気を振り絞った。

「今日ホテルに行ってもいいですか?」

しばしの沈黙が彼女を包んだ。真剣交際をしようというのに、断りもせずにいきなりホテルに連れ込むわけにはいかない。彼女は、また僕の方を見ずに正面を見据えたまま、意を決したように言い放った。

「ホテルに行くのはかまいません。でも抱くのはダメです。」

今度は僕が沈黙した。これまでそんな風に言った女がいただろうか・・・。

抱くというのは、タイ語では「コート」と言う。「コート シャン マイダイ カ」・・・彼女ははっきりとそう言い切った。僕はこれまでの人生で女をホテルに誘ったことは何度もある。ほとんどは日本人だが、この日のように緊張したことはかつてなかった。3年前の、アラサーの彼女のときも全く緊張しなかった。多分、本気で付き合おうと思ってなかったからだ。つまり、遊び心だった。

ところが隣にいる黒髪美人とは、出会ったその日からその気になった。彼女も真剣勝負を挑んでいることがすぐに分かった。そう考えると僕は彼女の言葉が不思議ではなかった。納得した。この女は真面目な女なんだ。出会ってから3回目か4回目でセックスするような軽い女ではなかったんだ・・・・僕はそう考えようとした。でも、「抱くのはダメ」というのは彼女の本心なのだろうか・・・。僕は頭の中が真っ白になった。

湖から僕の知ってるホテルまでは10分くらいの距離だった。しばらく迷った。ホテルへ行って抱かないか、それとも抱けないのだったらホテルへ行かないか・・・・。正解がわからない。そう思いを巡らして運転していると、赤信号で停車を余儀なくされた。ふと我に返ると、その交差点を左折したすぐ先が、僕の知ってるホテルだった

タイの交差点は信号が赤でも大概は左折できる。少しの間で僕は決心した。今ハンドルを左に切らなければ、一生後悔することになるだろう。今日黒髪美人を抱けなかったら、もう永遠にそのチャンスはないだろう。抱くことができてもできなくても、左に行かなくてどうするんだ!もはや結果は僕の眼中になかった。とにかく行くしかなかった。

そのホテルは実はアラサーの彼女といつも行くホテルだった。しかも車は僕の意思にかかわらず、何故か彼女が一番気に入っている9番の部屋に入ってしまった。習慣というのは恐ろしい。ほかにもその種のホテルは何軒か知っているのに。そして、よりによって9番だ。なぜそんなことをするのか、自分でも分からなかった。

アラサーの彼女のことは、僕の脳裏から完全に消えていた。今この場面を彼女が目撃したらどうなるだろうか・・・そんなことは1ミリも思い浮かばなかった。

9番の部屋は、ドアを開けると左側にダブルベッドがある。そして正面にテレビあり、テレビの左に冷蔵庫がある。浴室は一番奥だ。薄暗い部屋に入ると、黒髪美人は奥のトイレで用をすませた。そして戻ってきてすぐテレビをつけた。それからベッドの隅に腰をおろしていた僕の左側に並んで座った。

アラサーの彼女と僕は部屋に入るとまずビールを1本注文する。それからビデオを視る。そのホテルはファラン、日本人、タイ人と3種類のビデオが用意されているが、僕たちはタイ人どうしのシーンを選ぶことが多かった。それが習慣になっていた。黒髪美人がつけたのはビデオではなく普通のテレビだった。でもどんな番組だったかは、まったく記憶にない。

僕は何も考えていなかった。ここで一体どうしたらいいのか、何もアイデアがなかった。すべての選択肢は、女の手に握られている。すぐ横にいる彼女と顔を合わせることもできない僕があった。一種の放心状態だったのかもしれない。すると彼女は僕の方を向いて突然こう言った。

「私を抱きたいですか?」

ビックリした。さっき「抱くのはダメ」と言ったばかりの同じ女が言うセリフとは思えなかった。そして彼女の顔を見た。すると黒い大きな瞳が潤んでいるのがはっきりとわかった。やっぱりそうだったのか・・・僕はやっと我に返った。この女も、オンナなのだ。そして僕はオトコだ。

「もちろん、抱きたい。」・・・僕が発したのはその一言だけだった。

すると、間をあけずに彼女は抱きついてきた。両手を僕の背中に回して密着してきたので柔らかい乳房の感触が僕の胸に伝ってくるように感じた。まるで飢えた動物のように激しく二人の唇が重なり合った。重なるだけでなく深く合わさった。しかし初めての口づけの甘さをかみしめる間もなく、彼女は自分の着ていた服をかなぐり捨てると、すぐに僕のシャツのボタンを外しにかかった。

(以下省略)

黒髪美人は想像を裏切るほどセックスが好きだった。ほぼ完ぺきなまでに彼女のリードで事は進んでいった。これほど情熱的な女は久しぶりだった。いや、一番かもしれない。後で聞くと、彼女はその最中に4回も達していた。

ところが、僕はとり残されていた。先にシャワーを浴びていた黒髪美人の一糸纏わぬ姿にひかれて、僕は浴室をのぞいた。すると彼女は、僕がまだ鎮まっていないことに気づいて手招きした。そして一心不乱に彼女の口を使ってくれた。それでも終わらなかったので、とうとう浴槽に腰をかけて合体した。僕が出会ったタイ人女性は、例外なく男が果てるまでお勤めをやめることはなかった。黒髪美人は、そのなかでも一級の技をもっていた。その種の職業を経験したのではないかと思わせるくらい上手だった。

僕の計画は完遂した。多分、あの日の僕の計画は、後になって思えば彼女の計画と一致していたような気がする。食事が終わった頃、次に僕がどう出るか、彼女はじっと待っていたのだと思う。だから急に寡黙になった。何かを怖れたり期待したりするとき、人間は黙るか、それとも異常にお喋りになるかのどちらかだ。

「抱くのはダメ」と彼女が言ったのは、男の器量を試したのかもしれない。あきらめてホテルへ行くのをやめる男か、それとも無理やりでもやろうとする男か、それとも女に下駄を預けられる男か。そして僕は彼女のストライクゾーンに入ってしまった。僕は、彼女の予め思い描いていたとおりの行動をしたに違いない。黒髪美人はセックスが好きなだけの女ではなく、男を操る術を学んだ賢い女だった。

望んでいた通りの結果になっても、僕は喜んでいる場合ではなかった。翌日にアラサーの彼女との約束があったのだ。

僕の計画がもしも未遂に終わっていたら、悩むことなく彼女に会えただろう。そして何食わぬ顔でお勤めに励んだに違いない。しかし、こうなった以上は真実を彼女に告げなければならない。それぐらいの潔さは、僕はまだ持ち合わせていた。

夜は眠れなかった。そして、どう彼女に言うか決められないまま朝を迎えた。

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真夏の情事(4)

10月10日(火)

黒髪のアラフォー美人と2回目のデートをしたその2日後、僕は3年来付き合っている29歳のアラサーの彼女と会った。いつもは1週間に2回は会っている。毎回食事をしてホテルへ行くのが決まりになっていた。ところが、もう10日も会っていなかった。

それだけではない。その2日後、彼女は「明日は一日中暇だよ~」とLINEで知らせてきた。いつもなら喜んで会うはずなのに、「用事があるからダメ」と僕はそっけない返事を返した。まさか別の女とのデートがあるから会えないと言えるわけがない。それに、黒髪の美人に魂を奪われつつあるときに、彼女と会うのがもう辛くなっていた。

アラフォーの黒髪美人とはLINEのビデオ通話で毎晩のように話していた。喋るのはタイ語だった。朝は朝で彼女が会社に出勤する前の30分ほど、英語とタイ語の混じった書き言葉でやりとりした。朝の時間帯はアラサーの彼女とのLINEも日課になっていた。やっている途中で相手を取り違えたら大変だから神経を使った。ほとんど同時に二人とやりとりすることもあったからだ。

アラサーの彼女と久しぶりに会った3日後の夜、黒髪美人と僕は再びMAYAにいた。3回目のデートだった。今度は同じ4階でも日本食のレストランではなく、カウンターで食べる大衆的なタイ料理の店へと彼女が誘導してくれた。そして食事のあとは、また5階のベンチに座ってこれからのことを語り合った。

「今は女子寮に住んでますけど、あそこは男の人は入れないし、それに狭すぎるんです。エアコンもないし、冷蔵庫もないんです」・・・そのアパートは家賃が2500バーツと格安だった。給料は外国人の経営する会社といっても、月1万バーツそこそこしかなかった。だから、安い女子寮から他のアパートへ移ることはそう簡単ではなかった。 

しかも彼女は給料から毎月2000バーツを実家に仕送りしていた。つまり家賃を除けば、毎月5000バーツほどで生活していることになる。そんな話を聞いて黙っている僕ではなかった。

「エアコンと冷蔵庫くらいは付いてるちゃんとしたアパートに住んだ方がいいよ。今度一緒に探してあげるよ。家賃くらいは何とかしてあげるから心配しなくていい。そうだな、予算は1か月1万バーツくらいにしよう。もし5000バーツのアパートだったら、残りの5000バーツは仕送りに回してもいいよ。」

付き合い始めてすぐにお金の話をするのはあまりよくない。それはとても危ないことくらいは知っていた。でも、タイ人女性との交際では一番大事なことでもある。曖昧にするのはもっと危険だ。僕はアラサーの彼女に毎月一定額を援助していたので、それがなくなると仮定すれば、1万バーツはお安い御用だった。十分すぎるほどお釣りがくる。

語らいのひと時が終わり、黒髪美人がバイクを止めている2階の駐輪場へと一緒に向かっていると、突然彼女の方から僕の手を握ってきた。小柄なアラサーの彼女の手より少し大きくて柔らかい感触だった。「キスしたいけど、ここではできないね」・・・僕はそう言って、今度は彼女が休みの日曜日に会う約束をした。

次のデートを黒髪美人がどう組み立てようと考えていたか、今となっては知る由もない。僕にとってはとても重要なステップになるはずだった。そして実際にそうなった。しかし、ドンデン返しが待ち構えているとは、そのときは予想していなかった。


4回目のデート。それは市内から30分とかからないメーリムにある湖の中のレストランから始まった。僕は朝からいつになく緊張していた。あることを決行するかどうか、決行できるかどうか・・・それは黒髪美人を抱くことだった。

メーリムにある「ホワイ・トゥンタオ」はこれまでいろいろな人と訪れている。アラサーの彼女とも4回か5回行っている。湖(貯水池)の岸辺にたくさんの茅葺きの個室が並んでいて、魚料理や海老の踊り食い(クン・テン)などのタイ料理をゆったりとした雰囲気の中で食べることができる。値段もごく普通で、昼間食事しながら話をするのにうってつけの場所だ。友達どうしや家族連れも多いが、いつもカップルで賑わっているデートスポットのひとつだ。

黒髪美人はこの日初めてビールを口にした。そのせいかどうかは分からないが、これまで以上に饒舌だった。彼女は高校しか出ていない。けれども知識は豊富だった。タイ社会の問題点について語り合った。外国人の会社に勤めているので、上司や同僚ともよく話をするのだろう。大方の外国人が指摘する問題点に同感のようだった。彼女は、このままではタイはいつまでたっても先進国の仲間に入れないと言い切った。言わずと知れた公務員の袖の下だ。

ビールを飲んで社会のことを語り合う。今まで見えていなかった黒髪美人の一面だった。でも僕と同じで、朝から緊張していたのかもしれない。男と女が出会ってまだ2週間しか経っていない。でもお互いに気に入っていることは確かだ。キスこそしていないけれど、手は握り合った。その次のステップは社会問題を語り合うことではない。彼女と僕は職場や街で出会ったのではない。出会い系サイトで出会ったのだから・・・

食事が終わると、僕たち2人は寡黙になった。「これから、どこへ行きますか?」と聞いても返事が返ってこなかった。まさか黒髪美人が「レオテー(お好きなように)」と言うはずもなかった。何も答えがないのは、僕の抱いている計画にとって都合がいいのかどうかすら分からなかった。

人間というのは、男と女でなくても、二人の間の微妙な空気の変化を察知する能力を備えている。女は男の心の中が見えているのかもしれない。これからどうしたいとも何も言わないのは、僕の隠された計画の肯定なのか、それとも否定なのか・・・僕の緊張は最高度に達しつつあった。

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真夏の情事(3)

10月9日(月)

その女性の住んでいる女子寮はターニン市場に近い細い路地の中にあった。アパ―トの場所にマークを付けたgoogleマップを前日にLINEで送ってくれていたが、それでも初めての場所は分かりにくかった。

この辺りのはずだけど・・・そう思って車を止めた途端、携帯が鳴った。「もうちょっと前に来てください。左側に止めてください。」・・・どうして僕の車だと分かったのだろう。MAYAで会った時、車は見せていない。それに、どこからこっちを見ているのだろう・・・

不思議な気がしたけど、そのまま数十メートル車を前進させて止めた。すると笑顔の女性が助手席のドアを開けた。すごく綺麗だった。長い黒髪に大きな黒い目。この日は服も黒っぽかった。それが何ともセクシーに見えた。もちろん服ではなく、その女性のからだ全体からフェロモンを発散しているように思えた。時間は約束の11時ピッタリだった。

僕はうきうきしながら、車を前から知っている郊外のカフェへと走らせた。大事な話をするために、3年来付き合っているアラサーの彼女を一度だけ連れて行ったことのあるカフェだ。同じ場所を選んだのは、そのカフェが緑に囲まれていて格別に雰囲気がいいからだ。

僕たちは一番奥のこじんまりとした席を選び、向かい合って座った。すぐ外に見える木々の緑が生き生きとしていた。雨季の真っ最中だった。「ここはスパゲティが美味しんだよ」・・・僕はトマトソースのスパゲティ。女性はカルボナーラを注文した。もちろんコーヒーも一緒に頼んだ。女性はカプチノ、僕はいつものようにモカを選んだ。

女性は目の前のスパゲティ―にはほとんど興味が湧かないようだった。でもMAYAで会った時とは打って変わってよく喋った。僕も、自分が日本に居た頃のことや、前に愛し合って一緒に暮らした女のことも話した。辛かった過去の思い出を話すと、女性の眼から涙が零れ落ちるのがはっきり見えた。きっと情の厚い女にちがいない。僕はそう思った。

現在進行形で付き合っているアラサーの彼女のことは、もちろんお首にも出さなかった。それをすると、すべてがブチ壊しになることは容易に想像できた。

女性は自分の生い立ちを包み隠さず話してくれた。母方は祖母の代にミャンマーからやってきてチェンマイに住み着いたこと。ここで外国人の男と知り合い結婚し、自分が生まれたこと。でも国籍はタイだ。「どうぞ、これ見てください」・・・そう言ってIDカードを取り出して僕に手渡した。間違いなくタイの国民登録証だった。生年月日に目をやると、確かに39歳だった。

時間はあっという間に経っていた。たっぷりと2時間は語り合った。携帯に目をやると、午後の2時をとっくに過ぎていた。

「もうこんな時間ですね。次はどうします?」・・・女性は僕に次の行先も任せた。近くに滝があるのを思い出し、連れて行こうと思った。でも前日来の雨でそこは通行止めになっていた。「映画でも見に行きますか?」と女性から提案があったが、乗り気がしなかった。

「今日は帰りますか」・・・僕がそう言って車を走らせていると、女性は急に思い出したように言った。「大きいスーパーか何かあったら止めてくれますか。狭い部屋に古い洋服がいっぱいあるので、誰かにあげようと思うんです。でもそれを入れるプラスチックのケースがないんです。」

すぐ先に量販店のMACROの看板が見えてきたので入った。二人一緒に洋服の入りそうなプラスチックケースを探した。「これぐらいでどうかしら?」「いや、もうちょっと大きめの方がいいよ。大は小を兼ねるって言うからね。」「そうですね。じゃあ、これなんかどうかしら?」・・・恋人同士か夫婦の会話みたいになっている気がした。

僕たち、きっとうまくやれるカップルになるんじゃないかな・・・。早くも2回目のデートでそんな風に思った。

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真夏の情事(2)

10月8日(日)

出会い系サイトに登録した次の日、数人のタイ人女性からメッセージが届いた。一番最初の女性は39歳。写真で見ると相当の美人だった。タイ語で「こんにちは。初めまして」としか書いてなかった。僕もタイ語で返事を書いた。暫くして、その女性は外国人(ファラン)が経営する会社に勤めていて、英語ができることが分かった。

そのサイトは希望する相手の年齢や住んでいる地域を指定することができる。僕のプロフィールに興味を持ってくれる女性はバンコク近辺やイサーン地方の女性が多かった。遠くの女性に返事しても単なる「文通」に終わるような気がしたので、相手はチェンマイ県の在住者とした。

希望年齢は25歳から45歳の幅にしてみた。しかしその後も、チェンマイ県以外のいろいろな地域の女性からメッセージが入ってきた。年齢は30代から60代まで、中心は40前後のアラフォーだった。20代の女性には自分からメッセージを送るのだが、ほとんど返事はなかった。詳しくはわからないが、多くの女性が結婚歴があるようだ。子供のいる女性も20代を含めてかなりの割合を占めている。僕が3年間付き合ってきた彼女のように、純粋の独身者はごく少数のようだ。

僕がそういうサイトに登録したことは誰も知らない。もちろん彼女は想像すらしていない。少しだけ彼女に対して後ろめたい思いに駆られた。でも次から次へと舞い込むタイ人女性からのメッセージへの対応で忙しい数日が過ぎて行った。意外と自分はもてるんだなぁと錯覚しそうだった。と言うより、実際に錯覚した。彼女と会ったり、LINEでやりとりする時間がほとんどなくなりそうだった。

登録した3日後、最初にメッセージをくれた39歳の女性が自分のLINEのIDを書いてきた。「よろしかったら、こちらで話しませんか」・・・やりとりがLINE上になった途端、一気に会話がしやすくなった。しかも英語でもやり取りできるので、会話のスピードが断然速い。3年越しの彼女とのタイ語でのやりとりの比ではなかった。しかも書いてくるタイ語はとても丁寧。お手本になるようなタイ語だった。英語も、まるで教科書のように正しい英語だった。

その女性はチェンマイ市内に住んでいた。しかも驚いたことにLINEを始めた翌日、僕に一度会いたいと書いてきた。僕が誘ったのではないので、ちょっと出来すぎていると思ったくらいだ。何しろ、そのサイトで僕にメッセージをくれた最初の女性だ。美人だ。年齢も39歳で、若くはないけど年でもない。日本語はできないが英語はできる。

7月中旬の月曜日の夕刻。こんな簡単に会えるのかな?と半信半疑で約束した場所へと向かった。

その日は夕方になって大雨に見舞われた。僕は期待と後悔が入り交ざった複雑な思いを抱きながら、MAYAショッピングモールへと急いだ。道路はひどく渋滞していた。約束の6時を過ぎるころ、「ほんとに来れますか?」と女性から確認の電話が入った。

その女性は写真で見た通りの、そのままの美人だった。39歳だというのに20代後半か30代の前半にしか見えなかった。

日本食が好きなのかどうかは分からなかったが、女性の希望で4階にある「YAYOI(やよい)」というレストランで食事をした。その女性はカツカレーを注文した。でも、カレーソースをトンカツにかけるという食べ方を知らなかった。見るからに緊張している様子で、言葉数は極端に少なかった。ご飯も半分以上残した。食事中の女性の会話で覚えているのは、カツカレーの食べ方を聞いたのと、「残してもいいですか?」と小声で言った一言だけだ。

食事のあとは、その女性の誘導でMAYA5階のベンチに座って小一時間ほど話をした。今度は食事のときと違って話が弾んだ。彫りの深い女性の横顔がとても素敵だった。とくに目が黒くて大きくて、吸い込まれそうになった。真っ白で調った歯並びも美しさを際立たせていた。最後に僕から「また会ってくれますか?」と聞くと、「もちろんです!」と明るい声で答えが返ってきた。

そうなると、僕の眼中から彼女の姿が消えた。その39歳の女性と恋に落ちる予感がした。一目会ったその日から、その女性のことを思った。夜はLINEのビデオ通話で毎晩話をした。タイ語だったり英語だったりと言葉は決まってないが、画面を通して目に入る初々しいとも思える女の姿は、その筋の女ではないことを明瞭に証明していた。

二度目のデートの前に、僕は立て続けに他の女性2人と会った。最初の女性がいくら魅力的な女だと言っても、決めてしまうのはあまりに早すぎると思ったからだ。

一人はチェンマイの大型スーパーに自分の小さなお店を持つシングルマザーの女だった。ちょっとセクシーで英語が堪能だった。どうりでイギリス人と付き合ったことがあると言った。男好きのするお茶目な印象の女だったけれど、食事をしながら飽きもせずに延々と喋り続けるのでウンザリした。

もう一人はイサーン地方のある町に子供2人を置いたままチェンマイに出稼ぎに来ている離婚歴のある女だった。写真で見ると美人だが、実際に会ってみるとまるで別人のような感じがした。なぜか最初の女性を含めて、3人とも年齢は偶然39歳だった。でも3人目の女は生活に疲れているのか、とても30代には見えなかった。

(LINEのIDを交換して会話を始めたチェンマイの女性は10数人いた。毎日頻繁にやりとりする女性も5~6人いた。やり過ぎは何事も疲れる。商売女も一人いた。僕が「女たらし」なのかもしれないが、LINEの会話だけで僕に惚れた女性もいた。そうなると僕も怖いので会わなかった。LINEもブロックした。実際に会ったのは39歳の3人だけだ。)

さて、最初の女性と二度目にデートしたのは、MAYAで会ってから5日後の土曜日だった。今度は夕方ではなく、午前中から会うことにした。その女性はチェンマイ市内の女子寮に住んでいた。会社の寮ではなく、女性専用のアパートだ。タイに、そんな男子禁制のアパートが存在するとは知らなかった。

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真夏の情事(1)

10月7日(土)

7月中旬のある日のこと、僕はいつになく長い時間パソコンの前に座っていた。タイ人女性にタイ語や英語でメッセージを書いていたのだ。20人くらいの女性に書いただろうか。そして僕が書く数よりも、もっと多くの女性からメッセージが舞い込んできた。

その頃彼女とは1週間に2回くらい会っていた。お勤めも、これまでのように欠かさなかった。しかし僕の中で大きな地殻変動が起きていた。彼女はそれを知る由もなかった。

それより少し前、僕は彼女に提案していた。「僕たちは3年も付き合ってきた。歳は離れてるけど、この際、一緒に暮らすことを考えたい。」そして彼女に僕の資産や懐事情、そしてこれからの見通しを説明した。これはプロポーズ以外の何ものでもなかった。僕は当然のように彼女が「レオテー(お好きなように)」と言うのを期待した。

確かに僕たち2人を取り囲む周囲の状況は平らではなかった。「はい分かりました。すぐ一緒に住みましょう」と二つ返事でOKできるほど簡単ではない。それは分かってる。しかし、彼女の答えは僕にとって意外なものだった。

「私たち、愛し合ってるからいつかは一緒に暮らしたいと私も思ってます。でも早すぎます。一緒に住む前に、まず小さくてもいいから家がほしいです。それが出来るまでは一緒に暮らせません。5年くらいあとでいいです。それまでは、このまま会ってるだけでいいです。あなたが望むなら、毎日会ってもいいですよ・・・」

早すぎると言われても、僕はすでに60代も半ばだ。もうそんなに先は長くない、と思い始める年ごろだ。彼女は十分に若い。5年も待ったら僕は70代に入ってる。いくらなんでも、それは酷い。彼女に何か裏があるんじゃないかと疑い出した。

考えてみればもう3年以上付き合ってる。お勤めの回数はとっくに100回を超えて200回に近づいてる。そんな回数のことはどうでもよくても、僕たちは愛し合っている。だから一緒に住むのが自然じゃないか。それを5年くらい我慢しろだと・・・

僕が求めているのはセックスだけじゃない。もしそうなら、いくらでも相手は見つかる。それだけなら彼女の言うとおりにしてもいい。でも違う。愛し合ってる男女の行きつく先は、普通に一緒に暮らすことだ。僕は特別なことを求めていない。

ある日、単刀直入に彼女に聞いた。「僕と家と、どっちが大事なの?」・・・すると彼女は案の定、すぐに返事しなかった。5秒くらいの間隔を置いてから「あなたの方が大事です」と答えた。「家が大事に決まってるじゃない」と冗談を言ってくれた方がよほどよかった。あの5秒の間隔が気になった。今にして思えば、僕の質問の真意をはかりかねたのだと思う。ふつう、そんなこと聞くわけがないし、答えも決まってるわけだから。

僕の猜疑心はどんどん膨らんだ。猜疑心と言うより、彼女がこれほどまでも自分の家を持つことに拘ってるとは思っていなかった。何はさておき、「自分の家」なのだ。「私たちの家、僕たちの家」と言ってもいいけど、実際は彼女の「自分の家」だ。お父さんとお姉さんと一緒に住んでる立派な家があるのに、どうしてそんなに欲しがるのか・・・

僕は新しい提案をした。3年以内に家は建ててあげよう。でもすぐは無理だ。それまでの間、借家かアパートで一緒に住むのはどうか。彼女のお父さんはもう年なので、近くの場所でいい。365日ずっと一緒でなくてもいい。自由にしていい。でも僕はキミと早く暮らしたい。

僕が譲歩したのに彼女の返事はあまり変わらなかった。もう少し我慢せよというのだ。でも少しじゃない。彼女は5年を3年に変えてきたけど、僕にとっては大した違いはない。3年間は一緒に暮らさないということだから。「もうやめるか・・・」という気持ちが急に芽生えてきた。

3年目の浮気という言葉がある。でもこれはそうじゃない。僕たちは恋人以上かもしれないけど、お互いを拘束する何かがあるわけじゃない。一緒に住んでないし婚約をしてるわけでもない。僕は自由の身だ。そう考えると、彼女に固執している自分が滑稽にも思えてきた。

彼女は相性のいいセックスパートナーかもしれないけど、一緒に暮らして老後を迎えたとき、ほんとうによかったと思える女性だろうか?

そして7月中旬のある日、タイではよく知られたインターネットの出会い系サイトを覗いてみた。出会い系といっても、昔すこしだけ垣間見た日本の出会い系サイトとはだいぶ様相が違って見えた。まじめに伴侶を求めるタイ人女性がほとんどのようだった。

そういえば、僕はタイ人の女性とそれほど付き合ったことがない。日本に居た時を含めて、せいぜい数人だ。もっといろんな女性と付き合ってから決めてもいいのではないか。ほかの女性と付き合ってみれば、彼女が自分に合っているのかどうか、もっと冷静に判断できるかもしれない。彼女への猜疑心と一緒に、そういう狡猾な思いが芽生えてきた。

これは天の声か、それとも悪魔の囁きか・・・そんなことを思案するいとまもなく、僕は出会い系サイトの登録メンバーになってしまっていた。

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プロフィール

Niyom

Author:Niyom
身を削って過ごした30余年のサラリーマン生活にピリオド。ここチェンマイに移り住んでからも、楽しいこと辛いこと、いろいろとありました。でも、それは全部過去のこと。人生、どこまでリセットできるものなのか、自ら実験台になって生きています。

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