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合意別居

夫婦が別居する理由は一つではない。だが一番多いのは、男性に別の女ができて家を出て行くというケースだろう。

僕は50歳になったばかりの時に、日本人の妻との別居を経験している。それは新しい女と暮らすためではなかった。夫婦関係を修復するのが不可能だと自分で判断して、妻の合意を得ずに一方的に実行したのだ。そしてそのあとに、亡くなったタイ人女性との運命的な出会いがあった。

日本人の妻から見れば、タイ人女性と一緒に暮らすために家を出たように思われたに違いない。だから離婚の協議は難航した。東京にあった一戸建ての自宅と、妻が管理していた預金をすべて妻にあげると言っても、彼女は離婚に応じようとはしなかった。最終的には、妻の側の女性弁護士と僕自身が直接会って合意文書を取り交わした。

妻の側が一番気にしたのは、当時高校2年と中学3年だった男女の子供2人の養育費だった。そして東京の自宅と、僕自身は額を正確には知らなかった銀行預金、年300万円の養育費を2人の子供たちが大学を卒業するまで支払うという条件で離婚の合意に至った。女性弁護士は、「こんな条件で離婚する男性は見たことがありません」と言って恐縮した。当然だが、僕は2人の子供が大学を卒業するまで、一度も欠かさずに養育費を支払った。


さて、話は現在進行形の事案だ。

日本人の妻との離婚協議とはまったく違って、数時間の話し合いで合意に至った。もちろん合意書もなければ立会人もいないので、彼女はすぐにでも前言を翻すことが可能だし、僕は僕で、「また2人で生きていこう。頑張って家を買って、2匹の犬と一緒に仲良く暮らしていこう。お勤めは毎日でもいいよね?」と再出発を誓うこともできる。そうすれば、きっと彼女も喜ぶだろう。

でも今のところその気配はない。なにしろ、別居を実行したのは昨日のことだ。

彼女は昨日も仕事があった。家を出る時、僕にこう言い残した。

「いま洗濯しているので、終わったら干しといてくださいね。アナタの服は全部持って行かなくてもいいですよ。残しておいても大丈夫ですから。それから、この家にはいつ来てもいいですよ。ときどき見に来てくれると、犬たちも喜びますから・・・」

そう言って彼女はバイクで家を出て行った。僕は「わかった」と返事してから、自分の衣類の一部を鞄に詰め、愛用のパソコンを取ってあった段ボール箱に入れた。まだ朝から何も食べていないことに気が付いて、先月友人からもらった日本製のラーメンを作って一人で食べた。


Tのいるアパートに着いたのは午後2時ごろだった。Tはお店の仕事があるので当然だがアパートにはいなかった。持ってきた服を片付け、パソコンを箱から出してセッティングし、一息ついていると、ノックの音がして部屋のドアが開いた。いつも以上に嬉しそうな顔をしたTが入ってきた。

そのあと2人で買い物に出掛けた。Tが大学のお店で売る食べ物と、アパートで僕たちが食べる食事の材料などを2か所のスーパーで買った。思えば別居した妻と一緒に買い物をしたことはめったになかった。1年に数回もあっただろうか・・・

Tが丹念に食材を選び、僕が黙ってカートを押して付いて回る。それがいかにも普通の夫婦の行動のような気がした。同時に、妻とはそのような経験がほとんどなかったことが思い出されて奇妙な気分に襲われた。いま一緒にいるのはTなのに、自分の心は別居中の彼女にあった。

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Tの作る料理は、イサーン出身の妻が去年よく作っていたタイ料理とはまったく別物だった。

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これは牛肉のハンバーグの上のエビが乗った見たことのない料理だ。

「タイで牛肉をステーキで食べるとすると、高級な肉以外は硬すぎて食べにくいでしょ。それにマズイでしょ。でもハンバーグ用の牛肉なら安いし硬くない。だから、今日はこれにしたのよ。牛肉とエビの取り合わせはどうかしら?」

Tはそう言って僕に感想を求めた。スープも野菜炒めも、どれもこれも味が薄い。塩気が少ない。胡椒も控えめだ。僕は率直にそれを言った。

「塩を多くすれば確かに美味しくなります。でも、健康にはよくありません。アナタは血圧が少し高いんですから、塩分は少ない方がいいでしょ。ワタシも薄味が好きですから、ちょうどいいんです。化学調味料も一切使いません。」

別居中の妻が作ったり買ってきたりした総菜とはまったく別世界のような料理。Tは辛いタイ料理も食べるが、どちらかというと西洋料理や日本料理が好きなのだ。しかも自分で作るのが好きで、腕前も悪くない。

こうして、僕の別居生活は昨日から始まったわけだが、スーパーで買い物をしていた時の“違和感”は、Tと二人で食事をしているときも再び湧いてきた。

「目の前にいるこの女性が僕の伴侶になるのだろうか・・・本当に僕はそれを望んでいるのだろうか・・・」

Tは僕の顔を見て少し心配そうな表情を見せた。

「家のことが恋しいんじゃありませんか?気になるのは犬の事だけですか・・・?」

僕は少しだけ狼狽して、「2匹の犬がご飯を食べただろうか、と心配になっただけだよ」と胡麻化したが、Tはそんな僕の心の中を見透かしているようだった。だが、それ以上は僕を追及しないで話題を変えた。

(8月15日、11時45分)


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素早い行動力

何かとんとん拍子と言うか、取り越し苦労じゃ無いですが上手く行って何か気になりますが、新生活エンジョイして下さい。
確か以前の彼女との同居も素早かったですね、そのエネルギーと行動力には感心します。
お幸せに!!

Re: 素早い行動力

のり3さん、こんばんは

> 何かとんとん拍子と言うかー・・・上手く行って何か気になりますが

自分ではうまくいったという感覚はないんです。ドラマは、もっともっと複雑な展開になっていくような気もしています。その鍵は、2匹の犬が握っているような気がします。

No title

先日はラブホについて教えていただきありがとうございました。
最近なじみのマッサージの女性のアポを取ろうとしたら、彼女は独立して中古ながら車も月賦で購入、ランナー病院近くのモーテルに連れていかれました。
部屋代二時間360バーツとかでした。こんなところもあるのかと思いました。
名前などご存知ですか?
所で次の結婚、一年くらいまず同居は如何?子供もつくっては?
20年くらいすぐきます。
ちなみに私は80歳。


Re: No title

tiiさん、こんばんは

> ランナー病院近くのモーテルに連れていかれました。


ランナー病院の反対側にあって、細い路地のつきあたりのラブホですね。名前は忘れましたが、よく利用しました。

> 所で次の結婚、一年くらいまず同居は如何?

もう結婚はしないでしょう。基本、一人暮らしにして、数人の女と同時進行で付き合ってみようかと思ってますが•••

男の散財

昭和の男の散財は 飲む・打つ・買う でしたが タイに移住の高齢の男性はタイの女性かもしれませんね。

若い女性と恋愛が出来る財政力 羨ましいです。

Re: 男の散財

カルロスさん、こんにちは

> 若い女性と恋愛が出来る財政力

お金のかかる女もいれば、お金のことをあまり言わない女もいますから・・・
とはいえ、あまりケチると、いい関係が築けないことは確かですね。
プロフィール

Niyom

Author:Niyom
2012年、60歳でチェンマイへ移住。2017年にタイ人の妻を病気で亡くした後、愛人だった若いタイ人女性と再婚、前妻が可愛がっていた小さな犬2匹も一緒に暮らしている。

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