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予想外の展開の連続だった

「家のことが恋しいんじゃありませんか?気になるのは犬の事だけですか・・・?」

妻と話し合って正式に別居を始めたのは今月14日、水曜日のことだった。その日の夜、アパートで食事しているとき、ふとTが漏らした言葉がこれだった。「家のことが恋しい」とは、「妻が恋しい」という意味だ。いつも僕は犬のことを気にしているように見せながら、実は妻を恋しく思い始めているということをTは見抜いていたのだ。

その翌日、妻からLINEが入ってきた。

「ワタシたち、いつ離婚の手続きをしますか?」

離婚することに妻は合意していた。でも、妻の方から日程の相談があるとは考えていなかった。きっと、彼女はできるだけ引き延ばそうとするだろうと思っていた。でも、そうではなく、さらにその翌日には離婚の手続きを解説したタイ語の文書を送ってきた。

離婚に必要なものは婚姻登録証と、外国人の方はパスポート、タイ人の方はIDカードと住居登録証(タビアンバーン)が必要なのだが、そのほかに2人の証人にも役場へ同行してもらわなければならないと書いてあった。日本のように、離婚届に当事者2人のサインと証人2人のサインがあれば受理されるという簡単なものではなかった。

僕たちはLINEでやりとりして、離婚の日を8月26日と決めた。僕は9月か10月でもいいと考えていたが、彼女の方はそこまで待つつもりはないようだった。それどころか、日取りを決めた2日後に、彼女はこう書いてきた。

「26日までまだ日がありますね。ワタシは毎日苦しくて仕方ありません。もし可能であれば、来週早々に終わらせることはできませんか?証人はキャディーの友達2人に頼んだので、いつでもアナタの都合の良い日に仕事を休んで役場へ行ってくれますから・・・」

彼女の希望は離婚手続きの日程を1週間ほど早めてくれというものだった。彼女が積極的に離婚を選んだわけではなかったので意外だった。引き延ばすのとは逆に、一刻も早く終わらせたいというのだ。離婚の日を自分の心の中でカウントダウンしなければならないのが辛いという。なんとなく、その心理は僕にも理解できるものだった。

そんなやりとりをしながらでも、彼女は「会いたいです。愛してます」という言葉やステッカーを毎日のように送ってきた。LINEやメールでの、文字だけでのやり取りというものは、僕のこれまでの経験でも非常に危ういものがあることを知っていた。ついつい、こう返信した。

「僕も、あなたのことは今でも愛してます」

それは嘘ではなかった。Tが見抜いたように、離婚の日程を決めてからは、日に日に彼女への未練の思いが増してくるのを自覚していた。いや、未練と言うより、「まだやり直せる!」という思いに変わっていくのを自分で否定することができなかった。それと反比例するかのように、Tのちょっとした言動がえらく気になり始めた。それは「ワタシのことを愛してますか?」といつもいつも口癖のように聞いてくることだった。いつしか、Tの質問を無視しようとしている自分があることに気が付いた。

そして、彼女から僕の心にグサリと刺さる言葉が返ってきた。

「ワタシは離婚なんかしたくありません!アナタのこれからの幸せを考えたら離婚した方が良いと思ったのです。でも、本当はしたくありません!」

彼女の言葉は揺れ始めていた僕の心を反対側へ動かす力を持っていた。そして僕は大きなミスすら犯していた。そのミスとは、離婚の手続きを解説したタイ語の公式文書を彼女が送ってきたとき、そのLINEの画面をTに見せたことだ。だいたいのことは理解できたのだが、念のためにTに見せて、手続きの仕方を確認したのだった。

彼女がその文書を送ってきたということは、彼女が本気で離婚に応じようとしている証拠であった。それを見たTにとっては、安心材料のはずだった。ところがTは、LINEの画面を僕の知らない僅かのスキに、上にずらして見てしまった。「あなたのことは今でも愛してます」という、彼女に送った僕の言葉がTの目に入ってしまったのだった。

このあと、さらに予想外の展開となったのだった。


(8月20日、10時50分)


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プロフィール

Niyom

Author:Niyom
2012年、60歳でチェンマイへ移住。2017年にタイ人の妻を病気で亡くした後、愛人だった若いタイ人女性と再婚、前妻が可愛がっていた小さな犬2匹も一緒に暮らしている。

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