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Tと、その家族

少しだけ時間を巻き戻して話を進めよう。

Tは妻への想いを断ち切れない男に苛立ち、苦しみ、傷つき、ついに自制できなくなってアパートから僕を追い出した。その前夜、僕は初めてTの家族と一緒に食卓を囲んでいた。

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この家はTがまだ小さい頃にできたというから、30年は経っている。62歳になる父母はもちろん、Tの妹やそのほかの親戚も一緒に住んでいる。隣近所に叔父さんや叔母さんの家族も住んでいる。タイではよくあるパターンだ。

親戚の女性の多くは、チェンマイ市内の大きな病院で正規の看護師や准看護師の仕事をしている。Tも准看護師の資格を持っている。その点は、全くの偶然だが妻と同じだ。


この日はTの妹が食材を用意してくれた。豚肉のほかに、新鮮なサバを焼いてくれた。妹はまだ結婚したことがなく、Tとは違って子供もいない。今は仕事一筋だ。よく働く。商売のセンスがあるように見える。

「毎日、早朝から準備して、夕方まで売るわけですから仕事は疲れます。でもお金が入ってくるのが面白くて、疲れも吹き飛んでしまいます」

僕は商売の経験がない。でも何となく妹の言葉が理解できる。モノを売ること自体が楽しいというより、売れれば売れるだけ儲かることが面白い。当たり前だ。特に現金商売はそうだと思う。どんなものがよく売れるか、それを見極めるセンスと経験も必要だろう。

一方のTは、妹とは違って朝から晩まで働くことはしない。旅行とスポーツが好きで、できるだけそのための時間をとりたがる。外で美味しいものを食べることにも目がない。チェンマイ市内の主だったレストランは、和食を含めてほとんど知っている。安い庶民の食堂からデパートの中の高級店まで、美味しい店であれば、どこへでも行く。スポーツ好きで、いろいろな人といろいろな所へ食べに行くから、Tには友達がたくさんいる。チェンマイ市内の何処へ行っても、不思議なくらいTは友達に会ってしまう。

40近い独身女性の多くがそうであるように、Tには男性遍歴がある。18歳で子供を産むことになったタイ人との恋愛。タイに住むことが出来なくて国に帰ってしまったオーストラリア人。高齢のアメリカ人は身体障害者で、その男とは付き合ってから一度もセックスしたことはなかったという。それでもTは献身的に男の世話をした。

今もときどき身体障害者の世話をしている。男性が雇っている介護人がよくサボるので、そういう時にTが食べものを買って届け、入浴の介助もしてあげる。僕も一緒に行ったことがある。イギリスのオックスフォード大学で経済学を学んだ秀才だ。かろうじでパソコンのキーボードを打つことができるので、文章を書いて収入を得ているという。数年前、医療ミスが原因で両手が不自由になった。家族と離れてアパートで一人暮らしをしている30代のタイ人だった。


Tには実は姉が1人いた。つまり3姉妹だったわけだ。ところが姉は20代のとき、失恋の痛手が原因で自殺してしまった。Tは「自分は姉のような弱い心は持っていない」と言う。確かに、いろいろな恋を経験しているから滅多なことではメゲないだろう。でもTはデリケートな心の持ち主に見える。スポーツで鍛えた強い肉体とは裏腹に、そして困っている人の世話をする優しさの裏側に、とても繊細な神経を宿しているのが、僕には手に取るように分かるのだ。亡くなった前妻に性格が似ている。

Tの家族は父親も母親も、妹も叔母さんも、なぜか僕のことを気に入ってくれているらしい。お店で仕事中であっても、いろいろな食べ物を持ってきて食べさせてくれる。夜家へ行くと、父親が中から出てきて蚊に弱い僕のために蚊取り線香をいくつも用意してくれた。まだよく得体の知れない外国人にも親しくしてくれる家族に出会うと、「タイの家族は、やっぱりいいものだな」と思えてしまう。

Tは、僕に妻がいることを妹だけには話しているという。妹から両親にも事情が伝わっているかもしれない。でも僕がどんな人間で、どんな境遇にあるか、それについては誰も一言も聞いたりはしない。Tの家族に限らず、タイの人たちはあまり他人のプライバシーには深入りしない。西欧とは少し違う意味で個人主義的なのだ。だからタイ人の家族の中に急に飛び込んでも、僕のような外国人でもいつも気を楽にして過ごすことができるのだ。

(8月23日、11時50分)


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無記名でOK?

興味深く拝見しておりました
しかし、最近は、あまり興味をもてません。というより、女性に対する気持ちに共感が持てず、ただ気持ち悪さだけがのこります
筆者の独りよがりの言い訳だけを読むはめになってしまった、、という感想です
読ませてもらって、勝手な話ですね
たぶん、そこには愛がない。愛と勘違いした年老いた男の上滑りした気持ちの垂れ流しだと思います。
もう、閲覧することはないと思いますが、ぜひ、言い訳をしない人生を歩んでいっていただきたい

Re: タイトルなし

無記名の方、こんばんは

> 独りよがりの言い訳だけを読むはめになってしまった


“独りよがり”は、そもそもブログ(PC版)の冒頭に書いている通りです。でも私は自分で自分に言い訳することはありません。

> 愛と勘違いした年老いた男の上滑りした気持ちの垂れ流し

愛とは、そもそも勘違いですし、同時に人間にとって最も大切なものです。

No title

チェンマイ楽しそう(笑)。

ちょっと長いな(笑)。友達いないと思うなTは。

Tは寂しい男ですよ(笑)。


ご苦労様。

失礼しました。

まだまだ続きますから、もっと豪快に書いた方が良いもっと豪快に(笑)。

Re: No title

TOM・・・さん、おはようございます

失礼ながら、お名前を見て笑ってしまいました。

> もっと豪快に書いた方が良い

いや~、女好き爺さんの疑似恋愛ドラマですから・・・

No title

ウサギ様の自由な恋愛、還暦過ぎてもなお我々爺さんのお手本です。
やっかみ、中傷など大変だと思います。
それにめげずにブログの方つずけていただきたいと思います。

Re: No title

小林さん、こんにちは

> やっかみ、中傷など大変だと思います。

70歳近くになって、30歳くらいの妻と30代後半の愛人の2人を相手にしているわけですから、やっかみは想像できます。
でも、愛人のいる男なんてタイでなくても日本にもたくさんいますからね。それを私のように、誰でも読めるような形で書くかどうか・・・。愛人が増えて2人以上になったら、結構面白いシチュエーションだと思います。
プロフィール

Niyom

Author:Niyom
2012年、60歳でチェンマイへ移住。2017年にタイ人の妻を病気で亡くした後、愛人だった若いタイ人女性と再婚、前妻が可愛がっていた小さな犬2匹も一緒に暮らしている。

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