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瀬戸際だったアメリカの民主主義

長い闘いにやっと終止符が打たれるようだ。僕はアメリカの憲法や大統領選挙の制度についてあまり詳しくはない。11月の選挙以降、日本でもいろんな人がyoutubeなどで意見を言っていて、中にはトランプさんの言い分が通って最終的には大統領職を継続することになると、ほぼ断定するような人もいた。

万が一そのような事態になれば、これはもうアメリカは民主主義国ではなくなるのではないかと危惧していた。詳しくは書かないが、これまで一度も使われたことのない「抜け道」が存在し、トランプさんの逆転が全く不可能ではないということが言われていたからだ。もしその方法が使われるとすれば、それは1月6日(米国時間)、場所はワシントンの連邦議会で行使される可能性がゼロではなかったのだ。そのカギを握っていたのが共和党のペンス副大統領なので、トランプさんはしきりにペンスさんに圧力をかけ続けていたわけだ。

「1月6日に驚くべきことが起こる」と言い続ける人が結構いたのは、そのカラクリを知っているからだと思うが、別の意味で驚くべきことが起こった。トランプさんを熱狂的に支持する人たちが連邦議会に押し寄せることまではある程度予想されていたようだ。でもまさか審議中の建物の内部にまで侵入してしまうことまでは想定されていなかっただろう。しかも、その引き金を引いたのがトランプさん自身だったということはあまりにも酷い話だ。トランプ支持者と思われる女性が射殺されると言う悲しい事態まで起きてしまった。

今から2か月前の11月7日、選挙結果がまだ最終確定していない段階だったが、僕はこのブログで次のように書いた。

「懸念とは、開票結果がすべて決着した後でもトランプさんが抵抗する可能性である。その場合もいろいろな屁理屈を付けて裁判を起こす可能性があるし、それ以上に物理的な抵抗を試みる可能性もある・・・・(省略)

しかし僕は、そんなことよりも心配していることが一つある。それはトランプさんお得意の出鱈目情報を発信し続けて、熱狂的なトランプ信者を煽りに煽ってアメリカ国内で暴動が起きてしまうことである。もしそのような事態になれば、アメリカ合衆国の歴史において、とんでもない汚点を残してしまうことになる・・・・(省略)・・・・“トランプ原理主義”に酔っている国民も多数存在するので危ないだろうとは思う。

そうなってしまう前の安全装置は、もちろんいくらでもある。まず第一に、トランプさんが使っているツイッター等からの情報発信を遮断してしまうことである。法的に、あるいはツイッター等の規則がどうなっているのかは知らないが、きわめて危険な発言を野放しにするようにはなっていないはずだ。これまでは「警告」で済んでいたが、さらに次の段階へとすすめていくことが可能だろう。

一番良い解決策は、トランプさんが正気になることである。それは言うまでもない。アメリカ合衆国国民の半数近くの支持を集め、少なくとも4年間、世界最強国家の大統領を務めた男である。そうした過去にプライドを持ってもらいたい。大統領職を離れれば、たくさんの裁判が待ち受けているし、下手をすると刑事責任を問われる事態もありうるかもしれない。それでも、アメリカ国民ばかりか世界を巻き添えにして自滅することだけはやめてもらいたい。正気になってもらいたい。」


残念ながら、2か月前、このように書いた通りの事態になっているようだ。ツイッターもフェースブックも、トランプさんからの書き込みを一時停止した。でも遅い。暴動が起きた後だった。

言うまでもなく、連邦議会に乱入した群衆は、その日行われた「議会へ行って抗議しろ!」というトランプさんの演説に刺激されて行動を起こしたのだから、その結果の責任はトランプさんにあることは明白である。CNNは最初、「クーデターだ!」という記事を出していた。そのあと「暴動」に切り替えた。連邦議会が正規の手続きに則って次期大統領を決定しようとしているときに、それを阻むように扇動したのだから、確かにクーデターのようなものかもしれない。しかも首謀者が現職大統領!

トランプさんが元々正気なのか、それとも、ずっとそうではないのか・・・・それはいずれ明らかになるときが来ると思う。厄介なのは、正気であろうがなかろうが、正規の手続きで大統領になってしまえば、誰が何を言おうが大統領としての権限を保持することだ。そして4年が経った。その間、アメリカはどうなったのか?世界とアメリカの関係はどうなったのか?それは簡単に論ずることができるような事柄ではないが、大統領を決めるための大切な議会が開かれている最中に、群衆を煽って暴動に駆り立てるのは、あきらかに合衆国憲法を無視している。大統領自身が、大統領の存在を規定している憲法を無視した発言や行動をとる。もしそれが許されるとすれば、それは民主主義の破壊を意味する。

とにかく、アメリカの民主主義はかろうじで生き延びることに成功したようだ。もしトランプさんがまかり間違って選挙結果に逆らって大統領になっていたら・・・憲法を蹂躙してまで最高権力を手にした独裁者の烙印を押されて歴史に名を留めることになっただろう。いやはや、アメリカとは恐ろしいことが起こりうる国だったのである。首の皮一枚とはこのことかもしれない。


ところで、僕はこのブログをもう一か月以上更新していなかった。身辺では先月頃からいろいろなことが起こっている。でも、いちいち書くのが面倒くさかった。自分の過去の振り返りも、始めた以上は、ぼちぼちと続けようとは思っている。最近の日本についても言いたいことは山ほどある。

(1月7日、10時)
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No title

はい、吉田山逍遙のお話など、そろそろ出番でしょうか?

今回お書きになったものには高坂正タカ先生を想起させられます。

Re: No title

Taklinさん、こんばんは

学生時代のバカ話を早く書け、ということでしょうか?実はあまり面白いエピソードがないので逡巡しているのです。難しい本ばかり読んで、ちゃんとノートにメモを取るクソまじめな学生だったので(笑)。

高坂正尭ですか。思想的には僕とは相容れないと思ってますが・・・

No title

1972年に社会に出たときに 同期入社の吉田山勢が「オレは高坂ゼミだった」とか、進路を相談したら「お前の能力では無理、企業に行けといわれた」とか、盛んに自慢げに話していたのでうんざりさせられたのを覚えています。

大兄が相容れないとなさるのには小さく快哉を叫びました。、

ときに1000年の古都では象牙の塔を目指されたのですか?



Re: No title

Taklinさん、こんにちは

高坂尭は法学部教授でしたが、よく知られている話は、学生の前原誠司(中途半端な保守系衆議院議員)に対して「お前の能力では学者は無理だから松下村塾へ行け」言い、前原はその通りにしたらしいですね。
プロフィール

Niyom

Author:Niyom
2012年、60歳でチェンマイへ移住。2017年にタイ人の妻を病気で亡くした後、愛人だった若いタイ人女性と再婚、前妻が可愛がっていた小さな犬2匹も一緒に暮らしていたが・・・

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